2013年6月26日水曜日

先輩からのアドヴァイス(1) 田代空氏

先輩からのアドヴァイス(1)
国際人事委員会委員
田代空氏
インタビュー報告
<国際機関で生き残っていくための心構え>
 1998年11月6日14時より田代空氏にお話を伺う機会をいただいた。参加者は98年度JPO5名(高嶋裕美子・森山毅・榛澤祥子・山口靖世・徳永裕美子)。インタビューは和やかな雰囲気の中、これからJPOとして国際機関で働き始める上での心構えを中心に、田代氏の国連機関における経験を織りまぜながら、3時間にわたり行われた。
 
【田代空氏プロフィール】
現ICSC(国際人事委員会)委員
1974~79年 FAO人事部(人事課長、JPO/APOが始まったばかりの頃)
1968~70年 タンザニア政府職員
現72才で、38才の時、米国留学
 
【総論】
自己主張。先入観を持たず自分で判断する。自分でどうやって生き延びていくのかを探し出す。TPOに合わせて自分の手足をどう動かしていくのかが重要。
UN内の理想と現実のギャップ。UN内の自己中心主義がはびこる世界。
 
【現状】
 日本は国連に最大のコミットメントをしている国(16%拠出金負担)であるにもかかわらず、日本人職員は全体の2.5%程である。目標は8%にすることである。なぜ、日本人職員が少ないかというと、海外でやっていける人の層が薄いため、国内での需要に吸収されてしまい、国連になかなか人材が集まらない。
 
【日本人JPOの印象】
・ まじめで、言われた仕事はきちんとこなす。
・ 自己主張が足りない。自己主張の仕方がへた。
・ ひ弱である。
 
【その対策とは?】
・アングロサクソン・アメリカ人といった国連機関でのmajorityにない発想をする。
例)FAOはtechnical agencyなのに、職員の専門性のレベルが低かった。そこで、人材開発のためのrefresher programを発案した。知識・技術は古くなる。しかし、地位は高くなる。その地位に安住し、知識・技術の焼き直しをするという発想はなかった。
 
・どのようにして新しい発想をするのか。→誰かにおそわる。
胸襟を開いて話せる人をなるべく早く見つける。
例え、Director Generalにでも臆せず手紙を書く。
 
・Don't be too serious. お茶目にいこう。大胆に気楽に。
日本人は遠慮しすぎる。できるだけいろんな人と会うこと。待っているだけでなく、自分から能動的に働きかける。
 
・リラックスできる方法を持つこと。何かに熱中し、体を動かす。
交際範囲を広くもつ。貰ったものは、自分への投資と考え、現地へ全部返すつもりで。
 例)イタリア語を習う。イタリアを旅行する。イタリアンレストラン100軒踏破。
週に一度の深酒で体調安定。写真撮影。
 
・健康第一。
 自分は孤独であると思いこむこと(孤独感)が一番恐い。孤独感に陥らないようにするには、自分から動く。ノイズもおこるが、数多くやらないとあたらない。
 
【質問コーナー】
Q: 上司とうまくいかない時の対処は?
A: その上司の特徴(長所・短所)を早くつかむこと。どんな人でも短所や弱点はあるのだから、そこを攻撃することは避けなくてはいけない。逆にそういった弱点をカバーしてあげる。周りの人に相談する。それでもうまくいかない場合は、HQの人事担当者にHuman relation appealを出しなさい。
 
Q: 進んで調査等の為、出張にでたいが、予算の問題がある。
A: 一度ここを見てみたい、そこを勉強してみたい、この会議に出てみたいと掛け合ってみては?予算を持つから勤務扱いにして下さいと相談してみる。
 
Q: 日本人はプレゼンテーションが下手というが。
A: 発表のタイミング。何か他の人がやっていないようなこと。プレゼンテーションの技術が今一つでも内容で勝負する。
 
Q: JPOとしてキャリアをはじめるにあたって、フィールドでスタートするか、
HQがいいか。
A: 数カ月は本部で、そのあと一年以上フィールド勤務するというのが理想でしょう(hardship areaに行くと手当がつく。)
 
Q: 勤務評価について
A: Performance appraisalは半年か一年ごとに行われる。事前にsupervisorと「私はこういうことをやりたい」とperformance契約をし、その達成度をはかる。もし、そのようなシステムになっていなければ、本部人事と相談する。日本人は、一生懸命やるというイメージは定着しているが、initiativeをとる、creativeであるということでは弱い。
 
Q: 時代の変化の中で、国際機関でやっていける国際人を日本でどう育成していくのか。
A: 商社・大手銀行はワースト。海外勤務は国内勤務と大して変わらないのに、別扱いするのは古い。日本の海外における純資産は最高。日本の経済的なプレゼンスは当分続くであろうから、長期的にみれば、人の流れというのは大分自由になるのではないか。
 
Q: UNの福利厚生について。
A: 制度は整っている。例えば、HQには保育所もあり、子供を出産しても十分やっていける職場環境である。女性の正規採用はこれから増加していくだろう。
 
Q: 人事の人間として、どういう人は採用したくないか。
A: 自分を売り込む時にうそを言う人。うそではないけど、職場における自分の役割・アイデンティティがどれくらいかわかってない人。へんな所で自分を売り込む人。
 
Q: 上司に対して不満がある場合は?
A: 中間管理職の能力の問題。technical agencyでは特に古くなった知識/技術に気がつかない。Director以上はなかりpolitical(地域・人種)な理由で採用されるが、そういう人はせいぜい2~3年で、長くはいない。Be patient.
 
Q: JPOの2年後、他の国際機関に異動するのは難しいか。
A: いつも同じ内容のCVを出すのではなく、一つのvacancyに対して、そのvacancyに合ったCVを書く。そのvacancyに自分がどれだけフィットしているのか。rewriteする手間を惜しんではいけない。〆切は2~3日過ぎていても通常受理してもらえる。採用まで、機関内部からの応募だと3~4ヶ月、外部からだと1年かかることもある。
 
(文責:徳永・森山・山口)

0 件のコメント:

コメントを投稿