2013年6月26日水曜日

2003年国連競争試験

CLUBJPOでおなじみの栄谷明子さん(UNICEF・JPOセルビア・モンテネグロ)が、提供された情報をもとに国連競争試験の過去問を編集してくれました。
 まだまだ情報量が少なく、いわゆる「過去問」といえるような域ではありませんが、今後、情報提供者が増えれば、より詳細な過去問の再現ができると思いますので、みなさん、是非ご協力ください。
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 2003年の国連競争試験について、試験を受けた方々から情報を寄せていただきました。以下のとおり4部構成でご報告します。
1.受験場所、時間帯など事務的なこと
2.試験問題(専門試験)
3.試験問題(一般試験)
4.所感
ご協力くださったみなさま、どうもありがとうございます。更に情報があれば、またご連絡ください。
1.受験場所、時間帯など事務的なこと
Aさんの場合
受験場所:津田国際研修センター
受験時間帯:事前には、2月4日、5日両日とも夕方6時ごろから、集合時刻は30分前とされていたが、実際には6時に説明が始まり、問題用紙の配布、氏名などの記入、氏名などをカバーするシールの貼り付けなどの作業があるため、1日目は6時35分、2日目は6時15分に試験が開始されました。試験時間は4時間。両日とも10:30ごろ終了でした。
教室:ひとつの教室に50名程度の席があり、出席率は6割から7割ほどでした。
受験科目:東京会場での筆記試験受験者は経済と法律が一番多く、その次に多かったのが意外にも追加募集の区分である科学技術でした。それ以外の分野は一桁台の人数でした。
2.試験問題(専門試験)
*受験者の記憶をもとに再現してもらったものです。一部、記憶が曖昧だったり、不正確な個所もあるということをご了承のうえ、参考にしてください。
法務
第1問
前国家元首(大統領)の主権免除について
A国の前国家元首は、大統領時代に、国内紛争における政府軍による少数者集団の反乱軍が駐留するある地域の鎮圧を命令した。またこの少数者は、分離独立運動を行っており、当時の政権は、同集団に対する殺傷、拷問、失踪等を行っていた。この前国家元首は、現・元国家元首の地域会合のためにB国を訪問していたところ、C国当局が発出した引渡し令状にもとづき、B国の現地警察が前国家元首の身柄を拘束した。
A国外務省より、法律顧問として、主権免除を主張して前国家元首の釈放を求める際のメモランダムの作成を頼まれた。あり得る法的議論を、B国及びC国からの予想される反論と共に述べよ。また、他の可能な解決方法を提案せよ。

第2問
ウィーン条約法条約の加入国と非加入国との間での、条約の終了に関する見解の相違の解決
100年前にA国とB国との間で締結された条約は、軍事協力、経済社会的問題の協調、戦時及び自然災害における協力等を謳ったものである。紛争解決には非常に古めかしい手続きが規定されており、また軍事協力に関し「あらゆる軍事力をもって」関
係領域を保全するとした条項が規定されているが、この度A国は、右条約をすでに時代遅れであり、効力を有していないとして、右条約のもとの義務を負わない旨一方的に宣言した。他方、Bは右の総軍事力条項のみを時代遅れであると認めうるとしても、それ以外の部分及び条約そのものは依然効力を有すると主張している。ちなみに、A国はウィーン条約法条約の加入国、Bは非加入国である。
(1)ウィーン条約法条約の条項に照らし、B国の主張を検討せよ。
(2)総軍事力条項が強行法規に反しているとすると、右条項の扱いはどうなるか、その場合の手続きを説明せよ。
(3)上記の場合、条約全体としての効力はどうなるか。
(4)その後の取りうる措置を提案せよ。

第3問
戦時国際法の原則と国内紛争、戦争犯罪及びジェノサイドの構成要件
(事例があって、その状況に関する国際法上の規範との関係を説明するもの。主に、攻撃対象の限定、均衡性の原則、一般市民及び負傷者の保護等)
(また、事例の攻撃行為(明確に示された市民病院に逃げこんだ特定の少数者集団に属するゲリラ兵で小火器を装備していた者ら数十人及びそこに入院していた女性や児童を含む一般市民で多くが右ゲリラのシンパの者ら60人に対して重装備の兵器により
病院ごと攻撃し、ほとんどを死亡させた行為)につき、戦争犯罪及びジェノサイドの主張はいかに可能であるか、またいかなる点で右主張は難しいか。

第4問
国連停戦監視団の法的地位
・設問事例部分
最初の発砲は、A国からものもであったと報じられたが、どの地点から誰により発砲されたかは不明である。これに対し、B国の警備兵は、自衛であるとして発砲しかえした。これがもとで銃撃戦になり、かけつけた国連ミッションに対しても双方は発砲
した。(互いに承認していない隣接する2国の国境線において停戦を監視する国連ミッションが、銃撃戦に巻き込まれ、ミッション要員の負傷及び設備への損害が生じた場合の、国連が取りうる措置)
事後、最初の発砲は、A国の国境近くに駐留する、麻薬の不法移送を行っている組織の「ボディガード」であることが判明した。
・設問本文部分
(1)国連が、A国及びB国に対して取りうる措置(もしくは主張しうる議論?)について述べよ。
(2)(国連ミッション職員の安全に関する設問)
(3)このような事態を防ぐために国連はどのような措置をとるべきであったか。

第5問
国連海洋法条約の主要な成果のうち、次の2つについて論ぜよ。
(1)革新的なアプローチ
(2)21世紀においてもなお重要な問題

経済
*実際には、図や文章があるなど長い問題文の場合もあります。
「エッセイ」
(1)新古典派の投資理論とトービンのQの比較せよ。
(2)複占市場における航空会社の例を用いたゲーム理論の問題
補助金を加えた場合の変化の説明などが要求される
(3)エッジワースボックスの図を見て解く問題。
パレート最適配分の説明せよ。
「小問」
(1)いわゆる45度線分析の問題
(2)
(3)公共財の非排除性と非競争性の説明
(4)
財政政策がきかない,金融政策がきかない
利子に対する投資の感度性,利子に対する貨幣需要の感度性
それらの関係を説明せよ。
交易条件とはなにか。
ある国家の国際収支の・・・
(8)プリンシパル=エージェントモデルを用いて郵便局などの公企業が、利潤最大化ではなく目標の追求をする理由
(9)
(10)与えられている回帰分析の式の改善方法を述べる

経済(英語版)
Essay
1. Explain the policy of the nonresidential investment of Tobin's, and Neoclassical investment theory by Jorgenson
2. Game theory on air plain model (American airline & European airline)
whether subsidy is efficient or not?
3. Edgeworth box, and endowment. Parato efficient allocation
Short Answer (10問)
1. Expenditure function, and multiplier effect
2. Public goods, Difference between Non-excludability, and Non-rivalry
3. Tariffs and Quotas: efficiency?
4. Impact of increase in Government spending on R&D, decrease in Government
spending on Defense on Long-run aggregate supply
5. Terms of Trade
6. sensitivity of output(?) on interest rate when fiscal policy (Monetary
policy) is relatively weak.
7. Balance of Payment
8. Explain why public sector such as post office is not a profit maximizing,
using "Principal and Agent" relationship
9. y=BX+u B is K*N matrix, and u is orthogonal to X, what is the property
of B, and how it can be improved

3.一般試験
「分析問題」4つのプロポーザルに対して、財政支援をする妥当性を検討させる問題。
Project Evaluation
ある基金の信託理事会が、4件のプロジェクト案のなかから1件を選ぶというもの。設問は4頁分。
1頁目:プロジェクト選考の基準が1から7まで記述されている。
2、3頁目:A、B、C、Dの4つの案の記述。
3頁末尾:各案の見積もり
4頁目:プロジェクト対象者と総人口に関する数値的情報(計算をする必要がある数値もある)
第1問:それぞれのプロジェクト案につき、選考すべき理由を示せ。
第2問:それぞれのプロジェクト案につき、選考すべきでない理由を示せ。
第3問:2番目に良いと思われるプロジェクト案を挙げよ。また、翌年に理事会で選考されるようなものに改善するための提案を述べよ。
「要約問題」 開発、特に人材開発における保健と教育への投資の重要性や関係性、およびそれらと(経済などにおける投資)などその他のこととの関係性について。
本文はパラグラフ分け無しの約3頁半。300~400字で要約する。要パラフレイズ。
It was stated in the report thatではじめよ、という指示。感触としては、経社理やその機能委員会・WGなどの政府間会合で、専門家による報告書をイントロする(した)際のプレスリリースのようなものを想定しているのだろうか、という感じ。

International Affairs
「小問(12問のうち10問選択)」
(順不同、思い出した順で)
・ミレニアム開発目標の量的到達目標及び期限を付しているもののうち、4つを挙げ、簡略に論ぜよ。
・平和維持活動において女性の関与が考えられる状況のうち2つについて述べよ。
・2002年に国連加盟国となった国の名前及び首都を答えよ。またこの結果、国連加盟国は何カ国となったか。
・テロリズムに対する戦略の3つの目標について述べよ。
・アフリカ開発において重要な4つの分野について述べよ。
・テレビのグローバル化への影響について2つ以上例を挙げて述べよ。
・以下の4つの国から1つを選び、国内避難民が発生した背景につき簡略に述べよ。
 (コロンビア、ルワンダ、???、東チモール)
・ 事務総長は先般、Preventive Diplomacyに代えてPreventive Actionという概念を打ち出した。Diplomacyの形態をとるもの以外のPreventive Actionの具体的な形を2つ述べよ。
・大量破壊兵器の種類を3つ挙げよ。(ABCを答えるのだと思う)またこれらに関する国際条約のうち1つを挙げ、簡単に説明せよ。
・麻薬の不法輸送や取引を抑制するために、国連の犯罪防止関係及び麻薬統制関係の機関が芥子栽培を抑制するために行っているプロジェクトのタイプのうち2つをあげよ。
・??ユネスコの植物新品種の保護に関する宣言(?)、新品種の保護は、どのような意味で重要か。
・WFPに関する問題。

(一般)
Analytical Thinking
4 projects to chose. Of which 4 project is most suitable to give sustainable
development for minority, cohesive toward the culture, etc.
Summary
300-400 words
About relationship between, economics development, health, and education
12 short international affair
1. What Women can do for peace (in developing country?)
2. the number of the member, and 2 country which involved in the UN in 2002
3. 3 types of the mass destruction and related conventions
4. the meaning of Biosphere, name 2 sites (UNESCO)
5. Internally displaced person
6. UN recently changed its name from "Preventive diplomacy" to "Preventive Action" name 2 types of the action
7. The benefits of having genetically modified(?) crops
8. 3 actions(?) was taken for preventing Terrorism
9. name 4 statement in millennium declaration

4.所感
(法務受験者Bさん)
・設問文の分量が減った。
以前は、問題文だけでだいたい1ページ半から2ページくらいあり、要・不要ないろいろな情報が盛り込まれていた。今回は、いずれの問題も半ページから、1ページ以内だった。
・設問者の問題意識を明確に示す設問となっていた。
以前の問題であれば、何を聞いているのかいまいち見えず、手続き的事項に重きをおいた偏ったものが多かった気がする。今回の問題は、手続きよりも実体規定を、慣習法よりも実定法・条約法を聞いていて、「何について答えよ」というのを明確に示
していた。
・段階的な設問もあった。
 以前の問題傾向は、かならずしもそうでなかったが、今回の設問は、(1)(2)で答えたことにもとづいて、(3)、(4)と展開していくような設定になっていて、伝統的な国際法の試験に沿った設問だったと思う。
・単に知識を問う設問が出たのは、はじめて!
 第5問の国連海洋法条約の設問は、略してあるわけではなく、そのままです(もちろん、冒頭には「2002年は20周年記念で・・・・」というのが書いてありましたが)。
以上、法務の今回の問題は、「相当まとも化」してしまった、というのが、感想です。競争試験経験者でなければ解けないような問題が皆無だったのは、個人的には残念でした。

(経済受験者Cさん)
・各問題ごとに時間配分と配点が記載されており、その点では実に親切な試験だと思いました。
・終わってから気になったのですが、黒インクのみで書くという指示があり,黒のシャーペンで書きましたが。それで問題ないですよね?英語圏でのblack ink やblack pen のニュアンスに詳しくなかったので,あとで妙に気になってしまいました・・・・
・全体的に難問・奇問はなく、標準的な良問が幅広く出されている感じがしました。
                                     以
  上

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